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2010年6月10日(木曜日)

6月10日

カテゴリー: - fujitasougou @ 23時59分49秒

 裁判も終盤に近くなると、証人や原告・被告尋問をする。

 これまで証拠書類を出して主張してきたことを、尋問によって確認する大事な手続きだ。裁判官も、直に本人がどのように主張するのか、その顔やしぐさを見、声を聞いて心証を形成する。

 だから、私は、本人や証人との事前の打ち合わせは念入りにする。

 A男は、自分の知らない内に自分名義の借用証や担保差入証などを偽造され、財産を失ったと主張して、訴を起こした私の依頼者だ。

 A男作成とされる文書には、A男の筆跡と思われる署名があるが、住所の番地が違っている。自分で署名するなら、番地を間違えるはずがないから、これは、明らかにA男の署名をまねて偽造されたものである、と主張してきた。尋問の直前にも、その文書を示しながら、何回も予行演習をしただけあって、法廷での主尋問はうまくいった。

 主尋問の後、相手方弁護士から反対尋問がある。相手方弁護士は、やおら立ち上がり、「人間、誰にでも間違いはあるよね」と言う。A男も、「それはそうですよ」と同意する。相手方弁護士は、問題の文書を示し、「これ、絶対にあなたの書いたものではないと言い切れますか。住所の番地が違っているようだけれど、あなたも、随分転居しているから、うっかり前の住所の番地と混同したり、自宅と勤務先の番地を勘違いしたりすることもあるんじゃない」と尋問する。ここで、A男としては、強く「私が今住んでいる所の番地を間違えることは、絶対にあり得ません」と言わなければならないところを、あっさりと「そうかもしれませんね」と同意してしまう。さらに、相手方弁護士は、「この署名、あなたが他の書類に自分で書いた署名と字体が同じように見えるけれど、絶対書いていない、と言い切れる?」と聞くと、A男は、「絶対なんてことはあり得ませんよ」と、また同調するようなことを言う。

 相手方弁護士は、得意気に、「反対尋問を終わります」と着席する。

 私が、あわてて再主尋問で、「こんな多額の金額を借りる書面や自分の大事な土地を担保に入れる書面に、あなたは署名したのですか」と聞くと、A男は、明らかに混乱して、「あっ、訳がわからなくなった」と頭を抱え込んでしまった。

 控室で打ち合わせをしていた時と、法廷の尋問とは全く雰囲気が違って、後ろには傍聴人がたくさんいてあがってしまって、何を言ったらいいのか頭が空っぽになってしまったと、後でA男が言っていたが、これは、ただただ相手方弁護士の反対尋問の巧みさに脱帽。

 アンケートの取り方も、例えば、憲法九条について、「あなたは憲法九条を絶対に変えてはならないと考えますか」という質問の仕方なら、「そうは思わない」という回答が多くなるであろうし、「憲法九条を改正して、日本も軍備を持って戦争ができる国にしたいと思いますか」という質問の仕方なら、これも「そうは思わない」という回答が多くなるであろう。

 相手方弁護士は、質問の仕方による回答の違いをよく会得しているようだ。


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