12月20日
職業柄、他人の戸籍謄本を取ることが多い。弁護士や司法書士に与えられている特権である。
それは、もちろん、相続人の関係を調べて遺産分割の調停を出すとか、離婚した後、妻が再婚してその相手と妻が引き取った自分の子が養子縁組をしていれば、養育費の減額請求をするとか、職務に関して正当な使用をする場合に限られることはいうまでもない。
しかし、大阪府や狭山市など一部の自治体では、戸籍謄本や住民票を本人以外の者が取り寄せたとき、これを本人に通知する制度が導入されているという。
これは、平成19年に三重県の行政書士が、また、平成20年に神戸の司法書士が戸籍謄本を不正取得したことから導入されたのであろう。
これに対し、日弁連では反対している。その理由は、「通知を受けた本人は、訴訟、強制執行や保全処分がなされるかもしれないと考え、それらを警戒し、場合によっては、強制執行や保全処分に備えた対策をとることになりうる。保全処分の場合には、『密行性』が特に重要とされているところ、このように『ヒント』ともいうべきものが債務者宛に予め送られるとすれば、本来予定されている保全処分が機能しないこととになりうる。また、遺言書の作成に関して推定相続人らの戸籍謄本等をとることがあるが、推定相続人によっては、『本人通知』がなされたことによって誰が『遺言書』を作成しようとしているかがわかってしまうことがある。遺言者としては、遺言書作成を秘密にしておきたいのが普通であるのに、このような形で、その秘密を守っておくことが困難となり、場合によっては、生前に遺言者と推定相続人間でのもめごとを起こすことにもなりかねない。こういったことは、弁護士の職務遂行に支障を及ぼしかねないが、弁護士の関与によって行うか否かを問わず、遺言書作成、保全処分、訴訟、強制執行等国民の正当な権利行使に支障を及ぼすおそれがあり、その権利行使の妨げとなることが懸念される」というものである。
以前、ロースクールの授業の中で、学生に本人通知制度について賛否を問うたところ、ほぼ半々であった。私も、弁護士としては、日弁連の考えはもっともだと思う半面、個人的には、私の知らない間に誰かに戸籍謄本をとられたら何となく気持ちが悪いと思う。
難しい問題だ。
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