2月20日
帚木蓬生の「天に星 地に花」を読み終えた。
江戸中期、久留米藩で農民や町民を救済した高松凌水という医者の生涯で、実在の人物らしい。
著者も医者なので、病名や治療法が詳しい。蘇命散を煎じて風気や血の道によく効くとか、反魂丹は腹痛・食滞・腹瀉のある病人には不可欠だとか、舌を見て中央に亀裂があって白みがかっていれば、浮弱で、芋粥とかしじみ汁とか栄養のある物を食べて寝ていればよいとか、具体的な描写が至るところ目につく。
医者に文学者は多い。古くは森鴎外、齋藤茂吉、そして加賀乙彦、北杜夫、渡辺淳一。
精神科医の加賀乙彦は、刑務所の医者として勤め、死刑囚と無期懲役囚の違いを肌で感じ取り、死刑廃止を強く訴えている。
渡辺淳一の「麻酔」を読んだ後は、麻酔の失敗で植物人間になったり、死亡したりすることがわかり、私も網膜剥離の手術をした時は心配になったものだ。
法曹には文学者は少ない。たまに弁護士や検察官で小説を書く人はいるが、たいてい推理小説であって、文学というには程遠い。
なぜだろう。
法律学者は、感受性が鈍いのかしら、あるいは理屈ばかりこねていて、人を感動させるような文章が書けないのかしらと思ったりする。
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